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【症例報告】

胸郭出口症候群と思われる患者におけるカイロプラクティック・アジャストメント

Chiropractic adjustment for thoracic outlet syndrome

 

キーワード:カイロプラクティック・アジャストメント、胸郭出口症候群、第一肋骨

Keywords:chiropractic adjustment, thoracic outlet syndrome,first rib

  

【はじめに】

1860Willshireにより頚肋が神経・血管の圧迫症状を起こす可能性があることが報告されて以来、同様の症状を起こすものとして斜角筋症候群・肋鎖症候群・過外転症候群などが提唱されてきた。これらはいずれも臨床上よく似た症状を呈し、鑑別が必ずしも容易でないことからPeetらはこれらを胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome)として1)、またRobらは胸郭出口圧迫症候群(thoracic outlet compression syndrome)として包括することを提唱した2)

胸郭出口症候群は、頚肋の先端から第一肋骨からのびる線維帯や胸郭出口の狭い場所で神経血管束が圧迫、牽引などを受けて生じる疾患であり3)4)5)、今まで、1927年のAdosonらによる斜角筋症候群をはじめ6)1943年にFalconerWeddelは、肋骨と鎖骨間での圧迫により症状を示すものを肋鎖症候群とし7)1945年にWrightは、上肢の外転により症状を示すこと患者のために過外転症候群という用語を提唱してきた8)9)10)。この疾患は、若いなで肩の女性に多くみられることも特徴の一つである2)

上記の研究者の文献によると、胸郭出口症候群をきたす基本的な要因として、鎖骨下動静脈と腕神経叢の下神経幹からなる神経脈管束が斜角筋間隙、肋鎖間隙、小胸筋間隙を通過するという解剖学的事実があり、さらに14%に存在する小斜角筋や3)3363%に存在する線維索、頚肋といった解剖学的異常が神経脈管束を圧迫するリスクを高めているといえる2)11)12)13)

胸郭出口症候群は、障害される血管、神経の高位と障害の程度によって多彩な症状を示し、自覚症状としては、上肢のしびれ感、倦怠感、易疲労感、脱力感、疹痛、冷感などの他に、肩甲帯部や項部のこり、疹痛、脱力感などを訴える為、これらの症状が神経由来か血管由来かを判別すること、明確にどの部位で障害を受けているかを鑑別することはなかなか困難であるとされている2)3)4)。そして、立石は、胸郭出口症候群の診断基準として、上記の症状を持ち、AER等の誘発検査で愁訴が誘発もしくは増悪がみられるものとしている14)。また、Lindgrenらは、坐位での仕事が多い患者は胸郭出口症候群が起きやすいと報告している15)

また、胸郭出口症候群の特徴的な症状を限局的に示す試験や徴候はないが、Roosらは、最も信頼性の高い誘発検査は、座位で患者の両上肢を90度外転させ、肘を90度に屈曲させた状態で、指の屈伸運動を3分間継続させるabduction-external-rotation test(以下AER)と呼ばれる検査であるとしている12)16)

整形外科的には、三〜六カ月の保存療法で改善しないもので、日常生活に支障があるか、職業の継続ができないものには手術の適応があり、手術は、腋窩から肋鎖問隙に達し第一肋骨を切除する経腋窩進入法が、最も一般的である2)6)17)Wenzらの調査によると手術を行った81.4%は改善している18)

今回、胸郭出口症候群と思われる患者に対する高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントが著効を示したのでここに報告する。

【症例】

27歳女性(事務職)が左小指のしびれと感覚鈍麻を訴え来院。この症状は一週間ほど前に買い物に行った際、重い荷物をショルダーバッグで持ち帰ってからで、当初はピリピリとしたしびれがあったが、現在は左小指の感覚が鈍い程度とのこと。増悪要素は左手で荷物を持つことで、軽減要素は左手を休めることであるとのことであった。

 初診時の検査所見は、神経学検査において左小指に感覚鈍麻がみられ、AERにて、主訴である左小指のしびれが誘発された。静的触診では、左小胸筋に過緊張と圧痛がみられた。初診時の治療として、左小胸筋の緩和を目的とした軟部組織テクニックを行った。その結果、AERでの左小指のしびれの誘発はみられなくなったが、感覚鈍麻は残存した。

2回目の来院の際、左小指の感覚鈍麻は残存していた。検査所見としては、AERでのしびれ誘発はみられなかったが、感覚鈍麻はみられた。静的触診においては、左小胸筋に過緊張と圧痛、左第一肋骨に圧痛がみられ、可動触診においては、左第一肋骨の上方から下方への制限がみられた。治療として第一肋骨の上方変位に対し、高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメント、左小胸筋の緩和を目的とした軟部組織テクニックを行った。その結果、左小指の感覚鈍麻は消失し、AERも陰性となった。3回目の来院時でも患者の主観的にしびれ・感覚鈍麻は消失しており、AERも陰性であった。

 

【考察】

胸郭出口症候群に最も多い症状は、無感覚としびれ感であり、Sandersらの報告によると90%の患者には手に知覚異常がみられたとされている19)。そして、Connらは、知覚鈍麻は、まず指の尺側に現れ、徐々に尺側全体に分布するようになるとしており20)、本症例も、主訴は指の尺側のしびれ・感覚鈍麻であり、胸郭出口症候群の初期症状であると考えられる。

本症例ではAERにより症状の誘発がみられたが、上腕の過剰外転で症状を誘発するメカニズムは、肋骨鎖骨の圧迫と烏口突起下の空間における腋窩動脈の弯曲である10)90度以上の上肢の外転は、肩甲骨外旋させ、そのため鎖骨は胸鎖関節のところで後上方に持ち上がり、肋骨と鎖骨の間を狭くし神経脈管系を圧迫する21)22)。立石は、この肋鎖間隙が最も重要な役割を果たしているとしている14)。症状を生み出すその他の要因として、重いバッグを肩にかけて歩くこともあげられており、鎖骨が直接第一肋骨に押し当てられ、神経脈管系を圧迫すると言われており23)、本症例も重いショルダーバッグを肩にかけて歩いたことで症状が発症している。

本症例では、初診において小胸筋の緩和により、しびれは消失し、感覚鈍麻は残存したが、2回目で第一肋骨に対する高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントにより大きな改善がみられたことを考えると、初診時から同部位にアプローチすることで、同様の結果がみられた可能性は十分にある。このことから、胸郭出口症候群と思われる患者に対するカイロプラクティック治療を行う場合には、第一肋骨の機能障害に留意する必要があると言える。

James Stoxenは、胸郭出口症候群の最も多い原因は第一肋骨の機能障害であるとしており24)Deborahも、第一肋骨の可動制限により、腕神経叢が圧迫されることがあるとしている25)。また、解剖学的に考えると、第一肋骨と前中斜角筋によって作られる斜角筋間隙は、第一肋骨が上方変位することにより狭小化すると考えられ、その間隙で神経脈管束が圧迫される可能性は十分にある。

さらにLindgrenらにより、22症例の胸郭出口症候群の患者の全てに患側の第一肋骨の可動性減少が見られたことが報告されている26)。そして彼らは、胸郭出口の正常な機能には、第一肋骨の可動性が必要であるとしており27)2829)30)、本症例でも第一肋骨の可動性の改善により、主訴であったしびれ・感覚鈍麻は消失し、AERも陰性となった。

以上のことから、本症例は、第一肋骨の上方変位により、肋鎖間隙、斜角筋間隙が狭小化されていた可能性が高く、それが第一肋骨に対する高速低振幅のスラストも用いたカイロプラクティック・アジャストメントにより改善された為、患者が訴える症状に変化がみられたと考えられる。

 

【まとめ】

以上のことから、胸郭出口症候群と思われる患者に対しては、高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントを取り入れることが有効であると考えられ、本症例もその有効性を支持する一例として、ここに報告するものである。今後の類似症例の蓄積によって患者の利益に繋がることを期待する。

 

【参考文献】

1) Peet Rm, Henriksen JdThoracic-outlet syndrome: evaluation of a therapeutic exercise program. Proc Staff Meet Mayo Clin. 1956 May 2;31(9):281287.

2) 米延策雄,小野啓郎:胸郭出口症候群およびその近傍の機能解剖:整・災外, 29: 1611-1618, 1986

3) 廣谷速人:末梢神経絞扼障害:1997 105117

4)Liebenson CS:Thoracic outlet syndrome diagnosis and conservative management. J Manipulative Physiol Ther 1988;11(6):493-99.

5) Roos DB.New concepts of thoracic outlet syndrome that explain etiology, symptoms, diagnosis and treatment. Vasc Surg. 1979;13:313-21.

6) Adson AW and Coffey JR : Cervical rib a method of anterior approach for relief of symptoms by division of the scalenus anticus. Ann Surg 1927; 85:839-53

7) Falconer MA, Weddell G. Costoclavicular compression of the subclavian artery and vein: relation to the scalenus anticus syndrome. Lancet. 1943;2:539.

8) JOHN A. BEYER and IRVING S. WRIGHTThe Hyperabduction Syndrome: With Special Reference to Its Relationship to Raynaud's Syndrome Circulation. 1951;4:161-172

9) Vincent DavisHyperabduction Syndrome of the Upper Extremities and Associated Conservative TreatmentDynamic Chiropractic January 1, 1998, Volume 16, Issue 01

10) Wright IS:The neurovascular syndrome produced by hyperabduction of the arms. Am Heart J :1945 29:1

11)Cuetter AC,Bartoszek DM:The thoracic outlet syndrome controversies, overdiagnosis, overtreatment and recommendations for management. Muscle Nerve 1989; 12: 410-19.

12)Roos, DBCongenital anomalies associated with thoracic outlet syndrome. Am J Surg 1976; 132:771.

13)Sanders, RJ, Hammond, SLManagement of cervical ribs and anomalous first ribs causing neurogenic thoracic outlet syndrome. J Vasc Surg 2002; 36:51. 

14)立石昭夫:胸郭出口症候群の診断と治療:日整会誌 198054817-827

15)Karl-August Lindgren, Hannu Rytkonen Thoracic Outlet Syndrome: A Functional Dysfunction of the Upper Thoracic Aperture? Muscle Nerve 1995;18:526-530

16)Toomingas, A, Hagberg, M, Jorulf, L, et al. :Outcome of the abduction external rotation test among manual and office workers. Am J Ind Med 1991; 19:215.

17)Carty NJ, Carpenter R,Continuing experience with transaxillary excision of the first rib for thoracic outlet syndrome.Br J Surg. 1992 Aug;79(8):761-2. 

18)Wenz W, Husfeldt KJ.Thoracic outlet syndrome--an interdisciplinary topic. Experience with diagnosis and therapy in a 15-year patient cohort (80 trans-axillary resections of the 1st rib in 67 patients) and a literature reviewZ Orthop Ihre Grenzgeb. 1997 Jan-Feb;135(1):84-90

19)Sanders RJ and Pearce WH The treatment of thoracic outlet syndrome: a comparison of different operations. J Vasc Surg 1989; 10: 626-34

20)Conn, J Jr. Thoracic outlet syndromes. Surg Clin North Am 1974; 54:155.

21)Lord JWThoracic outlet syndromes: current management.ClinSymp 1971 233-32

22)McCleery RS, Kesterson JE, Kirtley JA, Love RB. Subclavius and anterior scalene muscle compression as a cause of intermittent obstruction of the subclavian vein. Ann Surg 1951; 133:588602.

23)Rosati LM, Lord JW.Neurovascular compression syndromes of the shoulder girdle. Grune and Stratton: New York; 1961.

24)James StoxenTreatment of Thoracic Outlet Syndrome12th Annual World Congress on Anti-aging Medicine,Mandalay Bay Hotel and Casino, Las Vegas NevadaDecember 4, 2004

25)Deborah PateFixation of the First RibDynamic Chiropractic November 11, 1991, Volume 09, Issue 23

26)Lindgren KA; Leino E Subluxation of the first rib: a possible thoracic outlet syndrome mechanism. Arch Phys Med Rehabil.  1988; 69(9):692-5

27)Lindgren KA ; Leino ECineradiography of the hypomobile first rib.Arch Phys Med Rehabil.  1989; 70(5):408-9

28)Lindgren KA, Leino E, Hakola M, Hamberg J.: Cervical spine rotation and lateral flexion combined motion in the examination of the thoracic outlet. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 1990;71, 343-344.

29)Lindgren KA.Thoracic outlet syndrome with special reference to the first rib. Ann Chir Gynaecol 1993; 82: 218-30 

30)Lindgren KAConservative treatment of thoracic outlet syndrome: a 2-year follow-up.Arch Phys Med Rehabil.  1997; 78(4):373-8