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【症例報告】

むち打ち関連障害後の慢性頚部痛におけるカイロプラクティック・アジャストメント

Chiropractic adjustment for chronic neck pain after Whiplash-Associated Disorders

 

キーワード:カイロプラクティック・アジャストメント、むち打ち関連障害、椎間関節

Keywords:chiropractic adjustment,Whiplash-Associated Disorders,facet joint

  

【抄録】

むち打ち損傷は、自動車の追突や衝突事故を原因とすることが最も多い。むち打ち(whiplash)とは、追突事故時に頭部が後方への過伸展とそれに続く前方への過屈曲の状態となることから例えられたものであり、頚椎の過伸展・過屈曲・回旋強制外力によって頚椎椎間板や椎間関節、関節包、周囲の靭帯、筋肉、神経などの軟部組織の損傷が引き起こされ、項頚部痛を主症状とする病態を指す1)

本症例は、15年前に後方からの被追突事故によって、頚部痛を発症した40歳女性に対するカイロプラクティック・アジャストメントが著しい改善を示した例である。本症例では、関節可動性を改善させ周辺軟部組織の拘縮を防ぐ保存的療法としてのカイロプラクティック・アジャストメントが有効であると考えられ、今後の類似症例の蓄積によって患者の利益に繋がることを期待する。

 

【はじめに】

19951月、カナダのケベック州では 、Walter.O.Spizer を委員長とした調査委員会タスク・フォースが招集され、むち打ちに関連した疾患の定義と管理に関するガイドラインを発表した。そのなかで、有資格者によるアジャストメントは、短期的な治療法として使用することができ、モビリゼーションも治療法の一つとして使用することができると述べられている10)20)

「むち打ち関連障害」(Whiplash-Associated Disorders : WAD) 10とは、頚部に一時的に大きな外力が加わったと推定される外傷後に生じる症状の一群の総称である12。その主たる症状である頚部捻挫は、交通災害などに関連して発生し、頭部における急激な加速減速運動が原因で生じる軟部支持組織の損傷である。日本では従来「むち打ち症」と呼ばれていたが、頚部痛および神経症状と自律神経症状を合わせて「むち打ち関連障害」と名付けられた1)4)。また、「むち打ち損傷」は日本では診断名としては不適当であるとされており、代わりに「頸椎捻挫」または「外傷性頸部症候群」が用いられている1)WADは、症状の主体が患者の訴えのみであることが多く、特徴的な画像所見がないことから統一された診断・治療法はなく、症状が遷延化する場合には患者は十分な説明もないままに漫然と薬物療法や理学療法を続けられることが多い13

3ヶ月を超える慢性期WADに対する治療ガイドラインは、精神安定剤や抗不安剤の投与が示されており1415WADは治る外傷であることを受傷初期段階で患者に強く認識してもらい安心させることが重要であると言われている。また、初期段階での対応が悪いことが遷延化を招くとされ、長期残存例は。1) 受傷直後の痛みの程度が強い症例、2) 頭痛、めまい、耳鳴りなどを伴う症例、3) 受傷時頭部回旋症例、4) シートベルト非着用症例、5) 頭部外傷特に重症頭部外傷(急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血)を合併した症例、6) 事故加害者および保険会社担当者と被害者の間で適切な人間関係が形成されていない症例で多くみられる1)

今回、遷延化したWAD患者に対する高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントが著効を示したのでここに報告する。

 

【症例】

40歳女性(会社員)左後頚部の痛みを訴えて来院。この症状は15年ほど前の被追突事故により発症し、左下頚部に痛みが常にあるとのこと。増悪要素は、首を左上に向けることで、疲れが溜まっている時は左肩甲間部まで痛みを感じる。軽減要素はあおむけで休むことである。上肢へのしびれを感じたことはない。また、既往歴として左胸鎖乳突筋の短縮による斜頚があり、手術などは行わず自然寛解したとのことであった。

頚部の可動域検査において、伸展・左側屈・左回旋で頚部痛の誘発が見られ、さらにその位置での頚部への長軸圧迫によって左下頚部から左肩甲間部の痛みが誘発された。この左下頚部から左肩甲間部の痛みに関しては、椎間関節への負荷を増強することにより誘発できることから、硬節痛であると考えられた。頚部静的触診において、左胸鎖乳突筋に過緊張と圧痛が見られ、可動触診において、頚椎の後方から前方への柔軟性の低下、C5/6分節間の右回旋・左側屈制限がみられ、頚部痛の再現が見られた。これらのことから、C5/6間の分節機能障害によるものと考え、頚椎に対する全体的なモビリゼーションの後にC5/6分節機能障害の改善を目的に高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントを行った。

 その結果、4回の治療で患者の主観的に頚部痛の消失が見られ、頚部の可動域検査での頚部痛の誘発、さらにその位置での頚部への長軸圧迫による硬節痛の誘発の消失、触診での頚椎の後方から前方への柔軟性も向上した。また、初診時は7.5であったVAS0になり、頚部の可動域おいては、右側屈40度、左側屈40度、右回旋65度においては変化が見られなかったが、屈曲50度→55度、伸展35度→40度、左回旋60度→65度と改善がみられた。

 

【考察】

WADの受傷機転は交通事故の中でも被追突事故によるむち打ち損傷が多い。むち打ち損傷の発生機序としては、後方追突の場合、頚部以下は急激な加速を見るのに対し、頚部にもたらされる慣性によって頚椎は過伸展の強制とそれに続く前方への過屈曲を起こし、頚部のたわみによって、頭部はC5/6付近の下位頚椎を中心に回転運動を起こす。さらに、この屈曲で過度に伸張された頚部の筋肉が収縮を起こすため、再び頚部は後方に過伸展を強いられることになる1114。衝突の際、体幹の後方回転運動によって下位頚椎の伸展が先行し、上位頚椎が屈曲するという二相性挙動をとり、この異常な椎間の挙動によって滑膜ヒダの挟み込みや椎間板線維輪と椎体終板結合部の引き剥がしによる組織損傷が生じる可能性が指摘されている。6

さらに、Kaneoka K らのX線を用いた研究によると、被追突事故の場合、上部頚椎の屈曲、下部頚椎の伸展を起こすことで頚部全体がS字弯曲を呈し、C5/6の分節最も伸展負荷がかかり、障害を起こしやすいことがわかっており7)Panjabi,Mらの研究では、被追突事故時に頭部の回旋を伴っていた場合は、C0/1C5/6C7/T1での損傷を起こす可能性が高いとされ18)、頚部伸展による損傷を起こしやすいが、屈曲による損傷はあまり起こらないとされている17)Barnsley Lらの研究では、鞭打ちの後の慢性的な首の痛みの54%は椎間関節由来であることが明らかにされており2)頚部の外傷後の最も多い慢性頚部痛は椎間関節の痛みが原因であると述べている論文もあ3)本症例でも受傷機転は被追突事故であり、同様の発生機序により損傷を受け、その結果、C5/6間の分節機能障害が発生したと考えられる。

本症例は頚部痛が主であり、神経症状(筋力低下・知覚障害・腱反射低下消失)が出ていないことからケベック分類20)(1)Grade 2と考えられる。運動痛や圧痛を認める筋群は、胸鎖乳突筋、頚長筋、僧帽筋、肩甲挙筋、頭半棘筋、頭板状筋であるとの報告もあり21、本症例でも胸鎖乳突筋に緊張と圧痛が認められた。また、慢性的な頚部椎間関節の痛みは鞭打ち後によくみられる兆候であるが2)、本症例では、それに加えて硬節痛もみられた。

WAD43%が長期化するという報告や236ヶ月以上遷延化したWAD患者の97%に頚部痛が存在するとの報告があり19)Woodward MNらの研究において、遷延化したWAD患者の93%が、カイロプラクティック治療により改善したとの報告もある23)。慢性期WADの治療は、安静と固定よりもエクササイズを取り入れた方が回復は早く、頚部痛に対してはカイロプラクティック・アジャストメントと運動の組み合わせが有効であるとの報告もあり、4)鞭打ち後の慢性頚部痛を訴える患者へアジャストメントと緊張している頚部筋への軟部組織テクニック(PIR)を使用した結果、7回の治療で、頚部痛・頭痛の消失、ROMの改善がみられたという症例も報告されている8)

そして、ROMの改善に関してはアジャストメントとモビリゼーションは同程度の効果があるが、頚部痛の改善に関してはアジャストメントのほうがモビリゼーションよりも効果的であることがわかっており5)22)本症例でもC5/6間の分節機能障害に対する高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントと頚部へのモビリゼーションによって頚部痛の消失とROMの改善が見られた。

 

【まとめ】

以上のことから、遷延化したWAD患者の頚部痛に対しては、高速低振幅のスラストを用いたカイロプラクティック・アジャストメントを取り入れることが有効であると考えられ、本症例もその有効性を支持する一例として、ここに報告するものである。今後の類似症例の蓄積によって患者の利益に繋がることを期待する。

 

【参考文献】

1) 安岡 正蔵:鞭打ち損傷、頸椎捻挫、外傷性頸部症候群、Barre-Lieou症候群.臨床外科 136頁~138

2)Barnsley L The Prevalence of Chronic Cervical Zygapophysial Joint Pain After WhiplashSpine 1995 (Jan 1);20(1):2026

3)Bogduk N, Yoganandan N. Biomechanics of the cervical spine Part 3: minor injuries. Clin Biomech 2001;16:267-75.

4) Brian Budgell : ムチ打ち関連障害の最新の予防と治療. マニピュレーション 20 : 57-61, 2005

5) Cassidy JD Lopes AA et al THE IMMEDIATE EFFECT of MANIPULATION vs MOBILIZATION on PAIN and RANGE of MOTION in the CERVICAL SPINEJournal of Manipulative and Physiological Therapeutics 1992; 15:570-575.

6) David Chapman-Smith:Redefinig Whiplash and its Management:THE CHIROPRACTIC REPORT July 1995 Vol.9 No.4

7) Kaneoka K, Ono K, Inami S, Hayashi KMotion Analysis of Cervical Vertebrae During Whiplash LoadingSpine 1999 (Apr 15);   24 (8):   763769

8)Leiza AlpassChiropractic management of intractablechronic whiplash syndromeClinical Chiropractic (2004) 7, 1623

9Lord SM; Barnsley L; Wallis BJ; Bogduk N Chronic cervical zygapophysial joint pain after whiplash. A placebo-controlled prevalence studySpine 1996 Aug 1;21(15):1737-44; discussion 1744-5

10)長谷川淳史:Quebec Task Force on Whiplash-Associated Disorders

11)小林巧, 遠山晴一 : 捻挫.受傷と回復のメカニズム. 理学療法 23 : 996-1001, 2006

12)川口善治 : 外傷性頚部症候群(むち打ち関連障害)富山大学医学部附属病院整形外科での実践. ペインクリニック28 559-565, 2007

13)木津伸也 : 頚椎捻挫の理学療法-むち打ち関連障害-. 理学療法 23 : 1002-1019

14)森健躬:鞭打ち損傷ハンドブック:1987 57

15)平林洌外:傷性頚部症候群の診断・治療ガイドラインの提案. MB Orthop 12 : 85-93, 1999

16)Ivancic PC, Panjabi MM, Ito S : Cervical spine loads and intervertebral motion during whiplash. Traffic Inj Prev 7 : 389-399, 2006

17)Panjabi MM Cervical Spine Curvature During Simulated WhiplashClin Biomech (Bristol, Avon) 2004 (Jan);19(1):19

18)Panjabi, Manohar M:Multiplanar Cervical Spine Injury Due to Head-Turned Rear Impact: Spine 2006 (Feb 15);   31 (4):   420—429

19)Radanov BP, Di Stefano G, Schnidrig A, et al : Common whiplash:psychosomatic or somatopsychic? J Neuro Neurosurg Psychiatry 57: 486-490, 1994

20)Spitzer WO, Skovron ML, Salmi LR, et al : Scientific monograph of the Quebec Task Force on whiplash-associated disorders: redefining "whiplash" and its management. Spine 20 : 2-73, 1995

21)都留美都雄 : いわゆるむち打ち損傷-治療論. 臨整外 3 : 315-323, 1968

22)Wayne WhittinghamDC,PhDActive range of motion in the cervical spine increases after spinal manipulationJ Manipulative Physiol Ther 2001;24:552-5

23)Woodward MN, Cook JC, Gargan MF, Bannister GCChiropractic Treatment of Chronic 'Whiplash' InjuriesInjury 1996 (Nov);   27 (9):   643645


【図表】

1.ケベック報告によるWhiplash-Associated Disorders (WAD) の臨床分類 (1995)

(文献10、文献20より引用) 

Grade 0

頚部痛なし

Grade

頚部痛のみ

Grade

頚部痛+頸椎運動制限・圧痛あり

Grade

頚部痛+神経学的所見(筋力低下・知覚障害・腱反射低下消失)あり

Grade

頚部痛+骨折・脱臼あり